バルトロマイの復元

Head of the Bartholomew - orijinalReconstruction of the Bartholomew

バルトロマイ頭部 オリジナル
バルトロマイ頭部 複原図



頭髪の筆致

オリジナルのバルトロマイの頭部には鋭い筆致で描かれた頭髪が僅かではあるが残されています。現在の最後の晩餐では頭髪部分が残されている例は極めて稀なので貴重な痕跡となります。

スフマートで有名なレオナルドですが、ロンドンのナショナルギャラリーに所蔵されている聖アンナと聖母子のための素描、通称バーリントンハウスのカルトンでは力強く鋭い筆致が無数に残されており、その筆さばきのスピード感には圧倒されるものがあります。
そういったスピード感のある鋭い筆致が最後の晩餐でも使徒達の頭髪を描く際に使われていたことがこのバルトロマイの頭髪の痕跡から伺えます。

 

study for the head of  Bartholomewバルトロマイの素描

バルトロマイの素描には顎髭や頭髪の部分は省略されて描かれています。

これはシモンやユダの素描でも同様に見受けられる特徴であり、レオナルドの素描段階での基本的な習慣であったことが伺えます。

レオナルドの時代に紙は高価な画材であり、どこにでもあるありふれた画材ではありませんでした。
扱い方も複雑で、紙の表面に画材の定着を良くするためにわざわざ下地処理を施してから使われるのが一般的でした。この紙にチョークで描くというのがこの時代の画家たちの間で流行り始めた最新の流行であったのでしょう。

レオナルドも初期の段階では紙にペン、インクを使ったデッサンを多用しており、チョークを使い始めるのはこのミラノ時代からになります。

 

バルトロマイの素描と複原図の比較

Translucent image over the reconstruction

 

上の図をみれば明らかなように素描がそのまま最後の晩餐に使われたわけではないことがわかります。特に大きく違う部分は首の後ろの肩の描写です。

素描では人物は直立に近い姿勢で描かれているのですが、壁画のバルトロマイの姿勢がやや前かがみで描かれているため肩の描写に大きな食い違いが生じています。
このレオナルド特有の制作手順、つまり大まかなポーズ、構図をデッサンで決定した後に細部のデッサンを準備するという手法はほぼすべての作品で見受けられるものでレオナルドの常套手段です。
またこれらの制作手順はレオナルドの手記の絵画論の中でも述べられており、レオナルドの絵画制作における哲学のようなものです。

しかし、私の個人的な感想ですがこの点がレオナルドの最大の欠点だと感じています。
レオナルドは肩を描くのがあまり上手ではなく、解剖学的に矛盾が見られる描写も多いのです。

それはレオナルドの代表作であるモナリザや聖アンナと聖母子といった作品にさえ見受けられます。具体的に言えばレオナルドは肩を大きなアーチ状に描く癖があり、その部分が大きすぎて丸すぎると感じます。

レオナルドにデッサン力がないというものではなく、単に人物を描く際に観念、概念で描いているというわけなのです。

それらは欠点でもありますが個性でもあります。もし、これらの欠点が補正された場合、レオナルド作品はどこかありふれた個性のないつまらない作品に感じてしまう可能性もあります。

 

バルトロマイ復元過程

Original condition is very poor in the lower part.左図 原画の状態

バルトロマイの上半身はすぐ隣の小ヤコブと比べればまだ描画層がよく残っている状態です。しかし、下半身ともなるとほぼ絶望的な状態と言えます。

このテーブルから下の画面の状態は決まって壊滅的で、どの使徒の下半身も描画層はほとんど残されてはいません。


 

最後の晩餐復元図 バルトロマイ 頭部の復元近年の修復でバルトロマイの頭髪部分の描写には茶色系の顔料が使われていることが確認されています。

確かにもう少し明るい茶系の髪の色で描かれていた可能性もあるでしょう。

しかし、私はこの部分の復元にはジャンピエトリーノの複製画に見られる黒に近い濃い茶色で再現しています。

 

 

 




最後の晩餐 バルトロマイの復元 緑のマントバルトロマイの緑のマントを復元する際には岩窟の聖母の天使のマントの描写が大変参考になります。

特にハイライトの取り扱いや布の光沢感、質感の出し方などに参考になる部分があります。




最後の晩餐 バルトロマイ 衣服の復元バルトロマイの水色の衣服の復元は概ねジャンピエトリーノの複製画の描写に沿うものとなります。
ただ腹部の部分は影の部分になっており、詳細な衣紋形状が判別できないのでこの部分に関しては原画に残された痕跡を優先して復元作業を進めることになります。



最後の晩餐 バルトロマイ 復元完成左図 バルトロマイの完成

バルトロマイの左手にはレオナルドが準備したと思われる赤チョークによるデッサン画がウィンザー城コレクションに残されています。

非常に正確に描かれたデッサンは実際にモデルを使って描かれた可能性を示唆します。

また右手に関しては原画の壁画では確認できませんが複製画では白い布を握っていることが確認できます。

さらにテーブル下の足に関しては原画ではレオナルドが描いた描画層はほとんど残されておらず、描かれていた位置すら特定することはできません。

復元には複製画の存在が欠かせません。

右足に関してはバチカンのタペストリーもジャンピエトリーノの複製画もほぼ同じ位置に描かれています。

ただサンダルの装飾に関しては双方独自の文様を示しており、どちらを採用するかはさらに他の複製画の描写と比較検討する必要性があります。

バルトロマイの足の描き方で最も特徴的なのは右足の前に左足を交差させて描かれている点です。

当初はこの足を交差させている点が理解できていなかったのでバルトロマイの足の位置関係には大きく悩みました。

 

 

 

主要な複製画との比較

Vatican tapestry - BartolomewGiampietrino's Bartholomew

ヴァチカンのタペストリー
ジャンピエトリーノの複製画

 

 

 

 

http://leonardoresearch.jp/  August 17 2014